武田薬品工業株式会社

ピロリ菌に関するよくある質問

監修:
北海道医療大学 名誉教授
浅香 正博 先生

こちらは、ピロリ菌の除菌療法を受ける患者様ならびにご家族の方々に、ピロリ菌の除菌療法について正しく理解していただくためのページです。ピロリ菌の除菌をお考えの方は、除菌療法が必要かどうか主治医とよく相談してください。

患者さん向けのピロリ菌に関するよくある質問をまとめています。


ピロリ菌

  • ピロリ菌って悪い菌ですか?

    ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌です。さまざまな研究から、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深くかかわっていることが明らかにされてきました。ピロリ菌が気になる方は、一度病院でご相談されてはいかがでしょうか?
    ピロリ菌って何者?

  • どのようにしてピロリ菌に感染するのですか?

    感染経路はまだはっきりとわかっていませんが、口を介した感染(経口感染)が大部分であろうと考えられています。また、ピロリ菌の感染率は、乳幼児期の衛生環境と関係していると考えられており、上下水道が十分普及していなかった世代の人で高い感染率となっています。
    ピロリ菌の感染原因

  • ピロリ菌の感染を予防する方法はありますか?

    ピロリ菌感染を予防する方法は、よくわかっていません。衛生環境が整った現代では、ピロリ菌の感染率は著しく低下しており、あまり神経質になる必要はないでしょう。
    ピロリ菌の感染は予防できる?

  • ピロリ菌に感染しているのはどんな人?

    わが国のピロリ菌感染率は、上下水道が十分完備されていなかった時代に生まれた団塊の世代以前の人は高いのですが、若い世代の感染率は年々低くなり、10代、20代では欧米とほとんど変わらなくなってきました。実際にピロリ菌に感染しているかどうかは検査してみないとわかりません。一度病院でご相談されてはいかがでしょうか?
    ピロリ菌の感染は予防できる?


ピロリ菌に関する病気

  • ピロリ菌はどんな病気を起こすのですか?

    ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こすことが確認されていますが、ほとんどの人は自覚症状はありません。ピロリ菌の感染による炎症が続くと、感染部位が広がってヘリコバクター・ピロリ感染胃炎になります。長い期間炎症が続くと、胃粘膜の胃酸などを分泌する組織が消失した状態(萎縮性胃炎)になります。さらに進むと、胃粘膜は腸の粘膜のようになります。その後、一部の患者さんでは、胃がんになることも報告されています。また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者さんは、ピロリ菌に感染していることが多く、潰瘍の発症ならびに再発に関係していることがわかっています。
    ピロリ菌と病気

  • ピロリ菌に感染している人はみんな除菌した方がいいのですか?

    保険適用で除菌療法の対象となる人は、ピロリ菌に感染している人のうち、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の患者さん、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の患者さん、胃MALTリンパ腫(いまるとリンパしゅ)の患者さん、特発性血小板減少性紫斑病(とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)の患者さん、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃(ないしきょうてきちりょうごい)の患者さんです。もしも、あなたが上記に該当しても、除菌療法が必要かどうかは主治医とよく相談してください。
    ピロリ菌の除菌

  • ピロリ菌にくわしい病院はありますか?

    日本ヘリコバクター学会はピロリ感染症認定医制度を作り、学会のホームページでは認定医のいる医療施設などが紹介されています。

    日本ヘリコバクター学会
    H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医一覧
    https://www.jshr.jp/medical/certification/doctor/(外部サイトに移動します)


ピロリ菌の検査

  • ピロリ菌に感染しているかどうかを知るためには?

    ピロリ菌への感染を調べるための検査を受ければわかります。検査方法には内視鏡を使う方法と内視鏡を使わない方法、合わせて7種類の検査方法があり、内視鏡を使う方法では、検査と同時に胃の中の様子が観察できます。あなたに検査が必要か、またどの検査が良いか、病院でよくご相談されてはいかがでしょうか?
    検査から除菌まで

  • 内視鏡検査(胃カメラ)は苦しくないですか?

    最近の内視鏡は挿入しやすいように年々改良が加えられてきています。口からの経口内視鏡だけではなく、鼻から挿入する経鼻内視鏡が開発されました。
    経鼻内視鏡は咽頭反射が起こりにくく検査中も医師と話ができます。
    さらに、鎮静剤で患者を軽く眠らせてから内視鏡を入れる方法もあります。
    あなたの場合はどのような方法が最適なのか、主治医と相談することをおすすめします。
    (※麻酔剤にアレルギーのある方は検査を受ける前に主治医に申し出てください。)

  • 上部消化管造影(バリウム)検査でもピロリ菌がいるか分かりますか?

    上部消化管造影(バリウム)検査では、ピロリ菌の有無の判定はほぼ困難と思われます。

  • ピロリ菌がいるか調べるとき、内視鏡検査(胃カメラ)でどんなことをしますか?

    内視鏡検査(胃カメラ)では、胃炎や潰瘍など胃粘膜の状態を目で確認すると同時に、ピロリ菌の検査として、胃の粘膜の細胞を採取することなどがあります。


ピロリ菌の除菌療法

  • ピロリ菌を除菌するとどうなるのですか?

    これまで慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発は、やっかいな病気と考えられていました。薬を服用することにより、ピロリ菌を退治する治療を「除菌療法」といいます。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の人がピロリ菌に感染している場合、この除菌療法を行うことによって、完全というわけではありませんが、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発が抑制されることがわかってきました。
    2004年に報告された多施設研究では、除菌に成功した方の胃潰瘍の再発率:2.3%/年、十二指腸潰瘍の再発率:1.6%/年であり、経過観察した4年間における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発率は3.0%でした。1)
    1)Miwa H, et al.: Helicobacter. 2004; 9(1): 9-16
    胃潰瘍、十二指腸潰瘍

  • ピロリ菌の除菌はどのように行うの?

    ピロリ菌の除菌療法とは、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に1日2回、7日間服用する治療法です。確実にピロリ菌を除菌するために、指示されたお薬は必ず服用するようにしてください。
    除菌療法成功のコツ

  • 除菌のお薬をのみ忘れない工夫はありますか?

    携帯電話のアラームをセットする、カレンダーでチェックする、お薬は目に付きやすい食卓などに置いておくなど、自分の生活習慣にあった方法がよいでしょう。高齢の患者さんでは家族の声かけも有効です。
    除菌療法成功のコツ

  • 除菌療法の副作用にはどんなものがあるのですか?

    便がゆるくなったり下痢を起こしたりすることや、味覚異常、発疹やかゆみがあらわれることがあります。発熱、腹痛を伴う下痢、便に血が混ざっている場合、あるいは発疹やかゆみがあらわれた場合は、直ちに薬の服用を中止して、主治医または薬剤師に連絡してください。
    軟便、軽い下痢または味覚異常の場合は自分の判断で服用する量や回数を減らしたりせずに、残りの薬を最後まで(7日間)飲み続けてください。ただし、服用を続けているうちに症状がひどくなった場合には、我慢せず、主治医または薬剤師に相談してください。
    除菌療法の副作用

  • 除菌療法の成功率はどれくらいですか?

    正しくお薬を服用すれば、1回目の除菌療法の成功率は77.3〜93.3%といわれています。2)
    2)日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会(編): H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版. 先端医学社. 2024 :88
    除菌療法の注意点

  • 除菌療法に失敗した場合はどうするのですか?

    一次除菌療法でピロリ菌が除菌できなかった場合は、2種類の抗菌薬のうちの1つを初回とは別の薬に変えて、再び除菌療法を行います(二次除菌療法)。
    一次除菌療法で除菌ができなかった場合でも、二次除菌療法をきちんと行えば、ほとんどの場合、除菌が成功すると報告されています。
    検査から除菌まで


ピロリ菌の健康保険

  • ピロリ菌の除菌は、健康保険が使えますか?

    ピロリ菌の除菌は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの患者さんで健康保険を使うことができます(※参考をご参照ください)。
    さらに2013年2月21日以降、ピロリ菌に感染している慢性胃炎の患者さんも、健康保険による除菌治療が可能となりました。ただし、慢性胃炎で健康保険でピロリ菌の除菌治療を受けるには、内視鏡検査(胃カメラ)で「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」と診断されることが必要です。

    ※参考~診断・治療の流れ
    ピロリ菌除菌療法の対象となる人は、次のI〜Vの病気の患者さんです。(※あなたに除菌治療が必要かどうかは主治医とよく相談してください)
    診断・治療の流れ イラスト
    検査から除菌まで